「かなは?」
「私が買い物に行ってた時に帰ってきたみたい。でも、部屋で寝てるみたいよ」
「そっか……」
お兄ちゃんが自分の部屋に入るために階段を上る足音が聞こえた。
「お兄ちゃん!」
「うおわっ」
部屋に入ろうとしたお兄ちゃんが、いきなり飛び出してきた私に驚く。
「かな、どうした?」
私の記憶が確かならば、彼は彼に違いない。
そして、お兄ちゃんの行動も頷けた。
「かな?」
「ねぇ」
「ん?」
ぎゅっとこぶしを握り締める。
「つばちゃんて、誰?」
はっきりと、お兄ちゃんの顔色が変わった。
「お前……」
「答えて、つばちゃんは……翼なの?」
お兄ちゃんは衝撃から立ち直っていないようだった。私を信じられないものを見るように見つめたまま、動かない。
「答えてよ。つばちゃんは……二階堂翼なの?」
「……ああ」
お兄ちゃんの肯定の言葉を聞いた瞬間、私の身体は勝手に動いていた。
「かなっ!」
「かなちゃんっ?」
お兄ちゃんの制止の声も、お母さんの驚いた声も聞かず、私は家を飛び出していた。

