狂奏曲~コンチェルト~




 私は飛び起きた。

「……」

 音を立てて血の気が引いたのが、自分でわかった。
 身体が小刻みに震えだす。

 チューニングで、音が微妙にずれているときに聞こえるような不快音が、ぴたっと合ったときのような感じ。

 ずっとあった欠落感が、しっくりとなくなった。
 同時に訪れたのは、恐怖にも似た感情。

 彼は、彼なの……?

 そう考えれば、つぎつぎと腑に落ちる全ての出来事。

「嘘……そんな……」

 それでも、心のどこかで信じたくないと思ってしまった。

 そのとき、玄関が開く音がした。

「ただいま」
「有ちゃん、おかえりなさい」

 お兄ちゃんとお母さんの声だ。