「かな、お前になら、乗り越えられるから」
「乗り越え……?」
お兄ちゃんは、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「かなちゃん、気にしなくても……」
「お母さん」
私はお母さんを見て、
「私は、思い出したいから」
そう言って、私も自分の部屋に戻った。
まんじりともしないでぼんやりしていた俺は、携帯の着信音で現実世界に引き戻された。
電話は有紀からだった。
「もしもし?」
『おう、翼』
有紀の声は、心なしか強張っている。
「どうしたんだ?」
『かな、俺にまで聞いてきた。何かを忘れてるって。何か知らないかって』
「え……?」
頭を思い切り殴られたかのような衝撃を受けた。

