狂奏曲~コンチェルト~


「忘れてるのか?」
「うん、たぶん……私、もしも忘れているのなら思い出したいんだ」
「っ……!」

 かなめが強いまなざしを俺に返した。

「思い出したい……?」
「うん」

 次に続いたかなめの言葉は、

「なんかね、大切な思い出だったような気がするんだ」

 俺の心を、締め付けるには十分だった。



 ベッドに入って横になっても、かなめの言葉が頭から離れず、なかなか眠りにつけなかった。

 俺の色を失った世界で、たった一人だけ色鮮やかで、俺に世界の意味を与えてくれる最愛の人。
 幼い頃から隣でいつも輝くような笑顔を俺に向けてくれた人。

 その最愛の幼馴染みの記憶には、俺はいない。
 俺自身の手で、その笑顔も、その記憶も奪ってしまった。

 その失われた記憶に気づき、思い出したいと言ったかなめ。

『大切な思い出だったような気がするんだ』

 その言葉を聞いたとき、涙が零れそうになった。