狂奏曲~コンチェルト~


「また、余計なこと考えてるでしょ」
「いや、かなめが可愛くて見とれてただけだ」

 俺の言葉に、かなめが驚いたように頬を染め、もじもじとする。
 そして、

「いっ」

 ばしっと叩かれた。

「翼ってば、そんなおだてても何も出ないよ!」

 やっぱり、かなめは可愛い。

「さ、行くか」
「うん」

 特に何をすると決めるわけではない俺達のデート。
 そんなふうに一緒にいるだけで、ただ幸せな気分になれる。
 かなめも笑顔で、きっとかなめだってこの幸せを感じているはずだ。

 この幸せをかみ締めて、手放さないように、これから新しい思い出を作っていけばいいじゃないか。

「ね、あれ見て……きゃっ」
「危ないっ……」

 不自然に体をひねってつまずいたかなめを、俺はその身体を支えた。
 昔からそそっかしいかなめを、俺は支えたことがあった気がする。

「…………」
「……かなめ?」

 体勢を治しながら、黙り込んだかなめ。

「どうした?どっかひねったか?」
「え、ううん……なんか、前にもこんなことあったような気がして」
「っ」

 かなめ……

「ほら、前に水族館に行ったときも……」
「あ、そうだったっけ。私ってそそっかしいね」

 へへっと、笑うかなめ。
 だが、俺は内心穏やかじゃなかった。