嘘つきと夏の木漏れ日

もうこの世にはいないんだ。


そう思うと、喉の奥で引っかかっていた言葉が溢れ出てきた。


「私が最後に見たおばあちゃんは、小学校3年生のときなの。おばあちゃんは本当に元気だった。そんなに若いわけでもないのに、私がどこかへ行きたがると、どこにでも連れていってくれた」


本当に元気だった。

本当に、本当に元気だったんだ。

どんなわがままも優しく聞いてくれた。

私は続ける。


「小学校3年生の夏。私はそこからおばあちゃんの家に来なくなった。理由なんて忘れちゃった。でも多分私は『おばあちゃんは元気だから、また自分が行きたくなったら行けばいい』って思ってたんだと思う。それから中学にはいって、部活が忙しくておばあちゃんのことなんか忘れてた。そんなときにおばあちゃんが死んだって知らせがきたの」


私はそこで話すのをやめた。


やめるしかなかった。


ポタポタ落ちる涙は、どうしても止めようがなかった。


どうしてかな?


おばあちゃんが死んだときですら泣かなかったのに。