貸して欲しいと思う反面、貸してくれなくていいとも思う。

だって、貸してもらっちゃったら話題がなくなっちゃう。


塾の講師っていうのは毎日いる先生とそうでない先生がいる。

そして、先生は後者だった。


お互いの授業の関係で週2日しか会えない先生。
会えても話題がなければ話せない。

そんな私にとっての唯一の話題が西野カナのCDだった。



それがなくなってしまったらどうなってしまうんだろう。

話せなくなってしまう。
話題がないから。


話題もないのに話せるほど私は器用ではない。



「高里先生ひどくないっ!?」



と側にいた英語担当の荒川先生に言う。
荒川先生は唯一の女の先生だ。



「そんなことないわよ~、高里先生は優しいんだからね~?」

「どこが!?」



そう返しながらも、心の中ではまったく逆のことを思っていた。