部屋の前まで着くと、コンコン、と小さめにノックした
するとすぐに扉が開いた
咄嗟に
『つば、』
翼を呼ぼうとすると出てきたのは遥だった
「嬢じゃね~か~、どうした~?」
『翼・・・、いる・・・??』
「翼なら朝からいね~よ~?
携帯、持ってんなら連絡したほうが早え~んじゃね~か~?」
遥は私の上着のポケットを指差した
『あ。』
携帯の存在をすっかり忘れていた私は間抜けな声を出した
遥はその声を聞いてクスクスと笑っていた
私は恥ずかしくて俯きながらアドレス帳の"翼"の文字を押した
アドレスは姫になった後、皆から教えてもらった
だから翼のアドレスも入っているんだ
プルルルル――・・・・・・
静かに鳴る電子音は私に翼に出て欲しいという気持ちを湧き立たせる
【・・・――もしもし】
少しして翼の声が聞こえた
『翼、今どこ??』
【あ・・・さくちゃん・・・浜辺に】
『今から行く、待ってて!!』
私は翼の声を遮り、一方的に通話を切った
翼の声がいつもとは違って、細い声になっていたから