堀江は怒りに我を失いかけていたが、どうせ何も出来ない不甲斐なさに、


堀江『もういい。だせ!早く!』


奈緒美『わ〜まだ震えてるよ!ビックリしたけど凄かったね!お兄ちゃん!』


堀江『いや全然。不快だわ。』


堀江『おい運転手!おまえあっちに着いたらクビな。』


運転手に、もはや堀江の声は届いてなかった。ガタガタと小刻みに震えていた。



運転手『・・・・ゴクりッ。』

その瞬間、緊張が緩んだ。
 
兄『ハハハ』


妹『アハハ』(お、兄貴。久々に笑った)


奈緒美は気まぐれなんかで甲府に連れて来たのではなかった。

そこには苦しむ家族がいる。

それだけであった。

暴君ゆえの、暴君。

次から次へと辞めて行く従業員やヘルパー達。

そして奈緒美も例外ではなかった。


そんな兄に限界寸前だった。


堀江『まぁいいや行け!。』

奈緒美『うふっ。』

哲平は奈緒美をじろりと見た。