他人格的適合者(タジンカクテキテキゴウシャ)『短編』

「好きには、させん!」

と意気込む溝口に、猫沢は心の中で、呆れていた。


(十分好きにさしてるだろ)

見えないように、軽く肩をすくめると、

「…次は、如何いたしますか?」



「そうだな?」

マリーアントワネットを抱きながら、溝口は考え込む。

「う〜ん」



猫沢は、根本的に…おかしいと思っていた。

「校長」

足元や、本棚の上にいる猫を避けながら、猫沢は前に出た。

「いっそのこと…退学にしたら、どうですか?殺し屋を雇うくらいでしたら…」
「馬鹿か!君は!」

即答で、溝口は猫沢の話を遮った。

「この子達の餌代は、どこから出ていると思っている!それだけではない!この学校にある…すべてのものが、小娘の寄付だ!」

溝口は、マリーアントワネットを机の上に置くと、

「退学になどしてみろ!寄附が貰えないだろ!」

溝口は、ぶつぶつ文句を言いながら、

「だから…毎回…殺し屋に頼んでいるのだ!わざわざ!」

溝口の言葉に、猫沢の目が点になる。

「我々に、関係がない者が、殺したなら…ばれまい!」

勝ち誇ったように言う溝口に、猫沢は頭を抱え、

「もし…学校内で、殺されでもしたら、当校の問題になりますし…」

猫沢は、首を何度か横に振り、

「お嬢様がいなくなったら…寄附なんて、」

深いため息をつき、

「でませんよ」



今度は、溝口の目が点になり……しばらく無言で固まった後、

猫沢に背を向け、

「…お嬢様…暗殺計画は、本日を持って、終了…。ご苦労であった」




(馬鹿しかいないのか!)

猫沢は目眩がするほど、呆れた。