まあ…災難ってやつは、どこにでもある。

道の小石に躓いただけなのに、塀に当たって、大怪我とか…。

でもさ…

いきなり、殺人はないよな。




真っ暗な部屋の真ん中で、僕は椅子に座らされて、後ろ手に縛られていた。

なぜか、俺にだけ照明があたり、

目の前の暗闇から、突き出された書類を見せられていた。


「これが…あなたに殺されたお嬢様の遺言書です」


男の表情はわからないが、眼鏡をかけてるらしく、

レンズだけが反射していた。

「ちょっと待て!俺は、殺してくれて言われたが、殺してはいない!」

俺の叫びに、男はフッと笑うと、人差し指で眼鏡を上げた。

「無駄です!証拠がありますから!」

「証拠!?」

「そうです!証拠、オープン!」

男は指を鳴らすと、さっと横に移動した。

すると、僕の目の前に、スクリーンが降りて来た。

画面に、岩に打ち付ける波が現れ、

「近日公開!」

映画の予告編みたいなのが、流れ始める。

「時間が無駄だ!飛ばします」

男は、リモコンを取出し、早送りする。

すると、一気に僕が映り、少女が映り……速すぎて、わからない。


END……と画面に出て、

部屋は暗闇に戻る。

「これが、証拠のVTRです」

男は髪をかきあげた。

「わ、わかるか!」