目が覚めるともう辺りは暗くなっていた。
「やべー。仕事」
起き上がる前に一応部屋を見渡すが浅井君の姿はない
「いや、期待してないよ。期待してないからね。一応ね。」
自分に言い聞かせながらゆっくり自分にかかった布団の中を覗いて見た
そらそーだよな。服きてるよな。
期待してないし。家に行っといて手出さないなんて失礼とか思ってるんじゃないかとか期待してない
むしろ服きてなかったら着てなかったで覚えてない事を後悔するのだからこれで良かったんだ
起き上がり少し急ぎ目に支度をする。
出勤は22時だが出勤前に賄いを食べるので21時には店に着くように家を出る
昨日の事が夢じゃなかったことを確かめたくて携帯を開く
天使まだおった。
「ねぇ、誰それ?ついに男が出来たのか」
バイト先の先輩の美月だ
「おう。と、言いたいがこれは最近越して来たお隣さんだ。」
美月は私の趣味に理解が有る友人だ。
職歴で言うと先輩だが年は一緒
「ちょっとおまわりさーん!不法侵入ですストーカーです!」
「いやちょっと待てって。これウチだから。昨日ウチ来て宅飲みしたのよ。イケメンが。ウチに来て。酒を飲んでいた。」
にやけが止まらない私を生ゴミを見るような目で見ながら美月はコーラに手を伸ばす
「あらそう。あんた黙ってれば可愛いんだからイケメンの一人や二人すぐ捕まるでしょうよ」
黙ってればは余計だ。私は喋っても可愛いぞ。下ネタなんて言ったことないぞ。
「いやイケメンとか怖いから。怖いから。」
「なんで二回言ったし」
割といつものやり取りで出勤時間を迎える
「大事なことだからです」
タイムカードに打刻すると5分前に仕事につく
「なに今日のあお肌ツルツルじゃん。セックスでもして来たんかー?」
ディナータイムの友人から引き継ぎをしてもらって持ち場につく
「恋だよ恋。恋をすると女の子は可愛くなるんだゾ☆」
「黙れ氏ねカス」
これも割といつものやり取りでディナータイムの友人は手をひらひらと振って休憩室に向かう
美月、私ともう一人が今日の夜勤メンツだ。
普段は私も美月もディナーだ。夜勤明けで美月と飲みに行く約束をしてるので今日は珍しく深夜にした。
渋谷とはいえ駅から少し離れた飲み屋なので暇だ
「今日どこいく?一件目?」
レジメインのホールを担当する私と片付けメインのホールを担当する美月は店の入り口で仕事が終わった後の話に花を咲かせる
「ディナーも誰か引き止めておこうよ」
と美月が嬉しそうに休憩室に向かう
飲みにいかずに早く帰ってあわよくば浅井君に会えることを期待しているなんてまさか言えない


