はっと目が覚めた。



誰かが動いた。陽梁だ。



こんな時間に何をしてるんだろう?




陽梁は、私達が寝ているコテージから出て行った。こういう時にやる事は1つ。尾行だ!




私は暗がりに隠れながら陽梁を追った。陽梁は、湖の方に歩いて行く。何をするつもりなんだろう?



湖に着いた。周りには誰もいない。




「里依。隠れてないで出てくれば?」



げっ! ばれてた。陽梁って本当に探知術持ってるんじゃないの?




こうなったらしょうがない。私は陽梁の方に歩いて行った。


「何で分かったの?」


「里依の尾行は分かりやすすぎ」



「やぁ。待たせてしまったな」



って笠本さん! 何で? 普通こんな時間に出歩いてたら怒るでしょ!



「で、わざわざ呼び出して話したい事って何ですか?」



笠本さんが陽梁を呼び出し?





「賢島にも、聞く権利はあるかもしれないが……」



「構いません」




何の話?




「ハート・ブレイクの事だ。ハート・ブレイクは強力な術だが、それだけ使い手は消耗する。あれは、使い手の感情で威力が変わるから、使い過ぎたら、精神が焼き切れ、死に至る。今までハート・ブレイクを持った者は皆、そうして死んだ。お前がハート・ブレイクを使った後、放心状態だったろう。クイーンの事もあったが、ハート・ブレイクの影響もあったはずだ」




「先生は結局何を言いたいんですか?」




「まぁ、ハート・ブレイクを使い過ぎるなという事だ」






……よく意味が分からないけど、どっちにしろこの術は使い過ぎたら陽梁は必ず死ぬんだ。そういう事しか私の頭には無かった。





“陽梁を失うなんて嫌だ”






初めて心からそう思った。