私は複雑な通路を進んだ。



皆は上にいる。



階段を3つ上ったら、観客席についた。皆が観客席に? なんで?



私は帽子を取った。これだけ群衆がいれば、まず気がつかれないだろう。




〈黎夜視点〉



俺達は、客席で闘いを見ていたが、正直興味は全くない。何故クイーン達は、こんな残酷な見世物を楽しめるんだ? 俺は意味が分からなかった。



「渡飾」


大島が声を掛けて来た。



「あそこに……星月がいるぞ」


嘘だろ。



正直そう思った。が、大島の能力は千里眼。見間違う訳がない。



「どこだ?」



「あそこ。階段の近くだ」





「賢島はいるか?」




「いない。」






全く賢島は何をしてるんだ? しょうがない。






「俺がこっそり星月に会いに行く。奴らに気が付かれないようにしてくれ」
そう言って、俺は移動を始めた。









〈陽梁視点〉

 

全く。群衆に隠れられるのは良いけど、皆が何処にいるのかさっぱり分からない。おまけに観客の歓声のせいで耳が痛い。



その時、肩に手をかけられた。



私は反射的に動いた。さっと手を振り払い、鳩尾に拳を叩きこむ……寸前で止めた。



「黎夜! びっくりさせないでよ! 危うくノックアウトさせる所だったじゃない!」


「ごめんな」



あれ?黎夜の目がおかしい。いつもと違う。くもってる。



「皆は何処? クイーンは?」






〈里依視点〉




私は道に迷った。方向音痴が祟ったみたいだ。よし、こうなったらいったん戻ろう。



私は、今まで来た道をひたすら戻った。もちろん帽子はちゃんとかぶって。暫くすると、さっき魔界の生物と話をした所についた。2人ともいない。チャンス!



私は木陰に隠れ、ナイフを鞘から取り出し、わざと地面に強く落とした。途端に煙が上がり、剣が龍に変身する。




“里依。今日は何の用?”



“そこの闘技場までお願いできる? 私が合図をするから”



龍の扱いは初めてだけど、やるっきゃない。



“仰せのままに”





そう言うと、龍は、雄叫びを上げながら闘技場へとハイスピードで飛んだ。私は帽子を首で固定し、ブローチに触る。ヴェローネが現れた。





さっそく1発目。とにかく威嚇だ。龍の手綱を手に絡ませ、私は不慣れな弓矢を一生懸命扱った。下手だけど、何とか飛ぶ。







3発、4発と当った途端、龍が急降下しだした。




“えっ、どういう事?”






“僕にも分からない! ごめん、里依”






そう言われた瞬間、私は窒息のあまり、意識を失った。





〈陽梁視点〉


私は黎夜に連れられて、紀香の所に向かった。



紀香を倒す! 皆を助けるにはそれしかない!



「あそこだ」



黎夜が指さした先に、紀香がいた。



よーし。



私はアポロンを取り出した。ゆっくり紀香に近づく。紀香は見世物に夢中だ。



私は紀香にアポロンを突き付けた。



「刺されたくなきゃ言う事を聞きな」



「やっと来たのかい陽梁。いや、ルナだったね。待ちくたびれたよ」



私は完全に無視した。



「皆を解放しな。そうすれば命だけは助けてやる」



「あんたはバカだねぇ。私のマリオネットに気がつかないなんて」



紀香が指を鳴らした。



視界の隅で黎夜が動いた。



突然、頭の中で火花が散った。




〈紀香視点〉



陽梁が気絶した。私はマリオネットに命令した。





「下の牢に入れときな。後、あんた達は戦闘準備。陽梁が目を覚ましたらすぐやるからね」







マリオネット、つまり黎夜とやらが陽梁を運んで行った。