遠くに何かが見える。石造りの建物のようだ。



“まさか…ね。あの夢が現実になるはずがない”



「陽梁、あそこ?」



「多分。ゆっくり近づいてみよう。見つからないように。何処から何が出てくるか分からないから」



私達はゆっくり近づいて行った。近づいてみると、かなり巨大な建物だと言う事が分かった。



歓声が聞こえる。



“この建物が円形じゃありませんように!”



私の祈りは通じなかった。建物は円形だった。この大きさ、歓声、そして形。それしか考えられない。



「コロッセオだ」



勘弁して!



「え?」



里依が訳がわからなそうだ。




「まさかあいつ……皆を戦わせて……急がないと! 皆が危ない!」




私達は、建物の周りを回った。すると、入口らしき物があった。けど、見張りがいる。魔界の生物が2人。




「どうしよう。他に入口があるとは思えないし、見張りの目をかわさないと……」




「私が行く」
と、里依が言った。





「だめよ。捕まっちゃう」



「クイーンは、陽梁の事は説明しても私の事はしなかったかもしれない。だから、私が見張りの気をひいてる間に忍び込んで」




「里依はどうするの?」




「どうにかするよ」




そう言って里依は歩いて行ってしまった。しょうがない。この方法にかけるしかない。





しかし、まだ私の中ではためらいがあった。何かよく分からないけど、底知れない不安。私は、里依の無事を祈り、見守る事しかできなかった。










〈里依視点〉

 私は、魔界の生物に近づいた。見た所、なんとか話は通じる。



「えっと……ここで何が行われるんですか?」



「ん、見ての通りさ。闘うんだよ」



「誰と誰がですか?」



「いつもは魔界人同士だけど……今日は何だっけ? 人間同士が闘う……だっけ? とにかくかなりの来場数だよ。チケットも飛ぶように売れてくよ」







〈陽梁視点〉


 “今のうちだよ! 陽梁!”



里依の声が聞こえた気がした。



“分かった”



私は武器庫で見つけた帽子をかぶり、透明になった。こういう時に役立つんだな。






 私は里依の横を通り、入口に向かった。





“里依、話が終わったら至急帽子かぶって!”






私はそう念じた。