私ははっと目を覚ました。


 
いつも付けてる腕時計を見たら、朝の6時半だった。
 

里依はまだ寝てる。




私はナイフを取り出した。これは短剣の1種のタガーと形状が良く似ている。恐らくタガーナイフと言うべきなのだろう。





鞘から抜く。すると、何か彫ってある事に気付いた。よく見ると、アポロンって書いてあった。まさか……私は里依のナイフを見てみた。すると、アルテミスって書いてある。




ふぅ。



やっぱりこのナイフ、おかしい。昨日気づいてたけど、魔力を感じる。双子のナイフみたいだけど……



「うーん。おはよう陽梁。何してんの?」






「ううん。なんでもない」




里依がご飯を用意している間、私は第3の術、ウィンド・コートで辺りを探ってみた。



何も感じない。本当に何もない。でも、嫌な予感がする。




私は北の方角を見た。







“皆がこっちにいるのは分かる。でも……反応が弱い。38人もいれば、もっと強いはずなのに……やっぱりおかしい”





 
私は、紀香が皆を誘拐したのは、私を呼び寄せる為だと考えてる。私が紀香の所に行ったら、皆はもう用なしだ。あいつなら、皆を殺しかねない。そんなの、絶対にさせない。




「陽梁? 用意出来たよ」




私ははっとして、向き直った。




「何か分かった?」



私は言葉を選びながら答えた。





「皆は北の方角にいる……どのくらいかかるかは分からないけど、そんなに遠くはないはず。食べたら行きましょ」




里依は頷いた。


 
私達は急いで食べ、寝袋などをしまい、出発した。



もしもの事を考えて、アポロンは、すぐに出せる所に隠した。リアンノンもすぐ取れるように右手を開けておいた。




森の中を進めば進むほど歩きにくくなり、木と木のインターバルっていうか間隔が狭まった。



ついに私達は木の間を進めなくなった。間隔が狭すぎる。引き返そうとしたら、引き返せなかった。木が動いている。木の幹同士がくっつき合った。私達は、周りを木に囲まれてしまった。





この森自体が罠だったんだ! さすが何でもありの魔法の世界!




って感心してる場合じゃない! 木の幹が近づいてくる。私達を押しつぶすつもりだ!




「陽梁! どうしよう!」



えーっと、木は火に弱いはず。でも、ここは魔界。逆の可能性もある。でも、そんな事考えてたら押しつぶされる。





私は一か八かで火の玉を放った。








幸い木が燃え出した。周りの木々が大急ぎで逃げて行く。あっという間に辺りは殺風景になった。