〈黎夜視点〉



俺達は、また閉じ込められていた。



「また何処かに閉じ込められてるぞ。息も十分に出来やしない」



食事として与えられるのは、薄いミネストローネと、固いパンだけだ。それぞれ19皿。単純に計算すると、2人で1皿になる。このまま行くと、俺達は飢え死にする。




「早くっ……星月……賢島……頼む……早く来てくれ!」




今の俺にはそう祈る事しかできなかった。



そう祈っていると、クイーンが来た。



「まだ祈ってるのかい? 馬鹿馬鹿しい。それより……良い話がある。早くこっちに来な」


そう言い、彼女は俺に手招きした。どうやら俺だけがここから1時的に出してもらえるようだ。


俺は皆を見やった。




“行ってきな、渡飾”




そういう気配が立ち込めた。





それに、応えるように俺は頷き、牢を出た。




連れて行かれたのは、とても広い部屋だった。彼女は椅子に腰掛け、俺に言った。



「この仕打ちに皆もほとほと疲れ果てているだろう。そんな事はもう解りきっている。そこで……この待遇を良くしてあげよう。満足いく食事が取れる。部屋もそれなりの物を用意させる。だが……1つ条件がある。彼女達を騙す事が出来ればの話だがね」



そう言うとクイーンは、ほそく笑んだ。




「……どういう意味ですか? 彼女って、星月達の事ですか? 騙せと言うんですか! 俺らに!」



「そういう事だ……物分かりの良い少年だな……何? 何に文句があるんだい? お前達はただ私の言う事を聞けば良いんだよ。聞いて、キャストになれば良い。何がそんなに不満なんだい?」



「……その為に、良心を捨てろと? ……悪いが俺は――」



誰かに口を押さえられた。そんな奴に俺は容赦しない。電気ショックを放ち、相手を気絶させる。



「ついでにあんたも気絶したいか?」



もう戦う準備は出来ている。俺は彼女に向かってそう言い放った。






俺は戦った。俺vs.クイーン。





が、それも束の間。俺は相手に見事に捩じ伏せられた。






「子供のままごとにすらならない。お前達は、所詮私のマリオネットなんだよ。どうあがいても、ここから逃げられないんだよ」





“この人の声には洗脳作用がある”







そう確信した時にはもう遅かった。