さっきまで聞こえていた黄色い歓声が、突然ワッとざわめくような声に変わった。

みんなの視線はステージじゃなくて体育館の中央に向いている。

なんだろ?

すると突然、人混みの中から誰かがポンっと抜け出した。

そしてその人は身軽にジャンプして、ステージへ乗り上がる。

と同時に、置いてあったマイクをつかむと口に押しあて、その彼は大声を発した。

叫んでるみたいに。

でもビブラートのきいたそれはちゃんと曲を奏でていて。

それまで続いていた、ドラムやギターの一定のリズムがぴたっと鳴り止み、ステージ上の4人が目を合わせ合図した。

一瞬、全体が静まり返り、彼の声だけが体育館中に響き渡る。

お腹の底に響く太い声。

強くて勇ましくて、でもちょっとだけ頼りなさげで儚そうで、優しくて……。

ッキャーッキャーッ

ドラムの合図と共に再び爆音が鳴り響き、黄色い歓声が再開。

けど、それにかき消される事のない、力強い歌声が私の胸を突如震わせた。

何だろうこの感覚。

体の中から何かが沸き上がるみたいに、興奮を抑えきれず、私はステージに釘付けになっていた。

ボーカルの彼はそんな私の気も知らず──(当たり前だけど)

獲物を狙うような野生の瞳で観客を見渡したかと思えば、悲しげに顔を歪めたり。

挑発的に顎を上げて見下ろしたかと思えば、照れ臭そうにニヤッと笑みをこぼす。