そして、大樹が1年間過ごした教室を今、私も使ってる。

「おりゃぁーっっっ!」

立ちこぎして、風をめいっぱいに浴びた。

この風もこの空も全部全部、繋がってるんだから。

大丈夫──……。





いつものように由紀ちゃんのラーメン屋で自転車を止めた時

ブブ、ブブブブ……

スマホが震え出した。

杏奈からだ。

片方のイヤホンだけ外して通話ボタンを押す。

「もしもしー?」

『あんたまた音楽聴きながら電話出てるでしょ。声でかいんだけど。

てか、ちょっと、健のブログ見た?』

「うん、見た見た」

大きかったかな?と気持ち小さめに返事してみる。

『アイツ、せっかくの休みに帰って来ないなんてふざけんなッ!つーか、オフなんて聞いてないし』

私も健さんのブログを見てさっき知ったとこだ。

「疲れてるんだよ、きっと」

『里花は平気なの?ブログも全然更新されてないじゃん』

平気って言ったら嘘になるけど。

「ブログは自意識過剰ぽくてやだって言ってたから。それに曲作りで、それどころじゃないんだよ。

でも健さんは意外にマメだよね。毎日更新してくれるから、なんとなくみんなの様子がわかって嬉しい」

『毎日って言えば安田先輩もじゃない?』

「うん。けど、あの人のは安田ワールド全開すぎて、正直何書いてるのか理解できないから」

『ぶぶっ。確かに。あの人ちょっとぶっ飛んでるもんね。安田先輩の隣にいたら、あの山本先輩が秀才に見えちゃうもん』