健さんのブログをチェックしてからイヤホンを耳に入れる。

iPodからすぐに流れ出した大好きな歌。

それを聴きながら自転車にまたがった。

校庭の八重桜が咲き誇る5月の、中間テスト最終日。

大樹の住む街ではとっくに桜は散ってる頃なのかもしれない。

風に揺れて落ちた花びらを見ながら、ペダルにかけた足に力を込めた。



大樹の歌だけがたくさん入ってるこのiPodは、安田先輩が空港でくれた。

でも操作間違えたとかで、最初の5曲はなぜか“ブルーム”が連続で入ってる。

そして裏には、“3年3組 長谷川大樹の女”とマジックで書かれてる。

渡してくれる時に慌てて名前を書き込んでくれたんだけど、安田先輩ったらいつもの流れで大樹の名前書いちゃって。

仕方なく“の女”って付け足してたんだ。

みんなは笑ってたけど、私は案外そのフレーズが気に入ってたりする。

“大樹の女”っていう、特別感。



卒業と同時に活動拠点をここから東京に移したたBloom。

もうこの坂道を2人乗りすることはないけれど、大事な記憶は全部心に焼きついてるから大丈夫。

歌を聴けばすぐに隣で笑う彼が感じられるし、目を閉じれば彼と一緒に刻んだたくさんのページがまぶたの内側で鮮明に蘇る。

それに、私にはお守りがあるから。

2年を3年に書き直された大樹の大切な自転車。

今では私の体の一部のようにあちこち連れてってくれてる。

進級してもまた彼は同じ3組で。

書き直す手間省けて良かったーって、みんなで笑ったっけ。