「今度は、きっと大丈夫ですよ」

私は自信満々に言ってみる。

「何を根拠に?」

大樹先輩なら、きっと、大丈夫。

もしつまづいても、何度でも折り直してきっとまた飛び立てるから。

お父さんを許すことが出来た先輩だもん。

新しいお母さんの愛情に気づけた先輩だもん。

大事な本当のお母さんの声に、ここで素直に耳を傾ける事を知った先輩だもん。

きっと、折りジワまでも魅力に変えて、もっともっと輝いていくんだ。

形のいいその耳に、リングピアスが映えるように。

「なんとなく」

「勘かよ!」

先輩が笑った。

空を翔て、ゆっくり降りて行く紙飛行機。

落ちるんじゃない。

降りて行くんだ。

自らの意志で。

無事着陸した紙飛行機を迎えに言って、拾いあげた先輩は、今度はフェンスの向こう側を目指して飛ばす。

それは、さっきよりずっと気持ち良さそうに風に乗って、遠くまで飛んで行った。

「今度はもっといい写真撮ろう」

それを見ながら先輩が言う。

「先輩目開けてて下さいね?」

私も立ち上がり先輩の隣から、地面に無事着陸した紙飛行機を眺める。

あれ、ちょっと待って?

「あ、あれ、見られたらどうしよう?」

私達の真夏の1ページは、決して自慢出来るような写真じゃないはず。

誰かに拾われる前に拾いに行かなくちゃ。

でも、焦って下へ行こうとする私を、先輩はひき止めた。