Bloom ─ブルーム─

そして、握っただけだった私の手を自分のポケットに突っ込む彼。

座ったままポケットに引っ張るから、私の体は自然と先輩側に傾いた。

あんまり近いから思わず先輩の胸から顔を離してしまう。

あ、でも誤解されたら困る。

「えっと、嫌いだから離れたんじゃなくて、その逆で」

「逆?」

先輩は“逆”と聞いて気づいたはずなのに、わざと「何?」って顔を覗き込んで、私に次の言葉を言わせようとする。

いじわる。

「……好きだから」

けど、ドキドキが邪魔して、発音が変になった。

「なに人だよ?」

先輩が笑いながら突っ込む。

「だって……」

「里花?」

まだ“好き”と口にしたことの動揺が消えてないのに、今度はそんな私の名前を甘く呼ぶ先輩。

「は、はいぃっ」

そしたら次は声が裏返った。

「これは絶対落とさないし、忘れないから」

“これ”って、ポケットに入り込んだ私のこと?

それで、「もしかしたら間違えてこのままどこまでも連れてっちゃうかもしれないけど」なんて。

間違えちゃえばいいのに……って思ったことは、ナイショ。




見上げれば、朝からずっと変わらない晴れやかな空が広がってるのに。

さっきよりもずっと青く澄んだように感じる。

風だって、こんなに美味しい。

見上げれば見下ろしてくれるこの眼差しが、単なる優しさかもと不安がらなくていいんだと思うと、それだけで私を取り巻く世界が突然輝き出すんだから、不思議。

まだ、半分混乱気味の私は、この状況を完全に信じきれてないけど。