Bloom ─ブルーム─

今は、この瞬間の幸せを思いきり吸い込もう。

あの真夏の1ページのように、今のうちにたくさんのページを刻もう。

だって、好きなんだもん。

大好きなんだもん。

私は鞄から油性ペンを取り出すと、自分の腕に大きく『2年3組 長谷川 大樹』と書き込んだ。

そして、その手を先輩に差し出してみる。

「よろしくお願いします」

「……」

先輩は一瞬驚いて。

それからお腹を抱えて笑い出した。

「本当に里花は予想つかなくて怖いけど、面白いよ」

って。

差し出した手を受け取ってくれた先輩は、書かれた名前を撫でてまた笑う。

「まいったな」って。

「先輩?」

「ん?」

「昨日言ったの、あれは嘘です。あんなの全然ラッキーなんかじゃないんです」

『いつか遠くに行っちゃうかもしれない人との恋が実っても、辛くなるだけだし。そう考えるとラッキー』

あんなこと。

「私にとってのラッキーは、やっぱり好きな人と両想いになれることで。

辛いことは、好きな人が遠くに行くことじゃなくて、その夢の邪魔をしてしまうことです」

どうなるかわからないこの先が不安じゃないと言ったら嘘になるけど。

先輩の夢は、もう、私の夢でもあるから。

「絶対泣かないっていう約束はできないけど……」

強がった後に吐いた弱音に、先輩がふっと笑みをこぼした。