Bloom ─ブルーム─

「嫌いになったから、じゃないの?」

「嫌いだなんてっ!そんなこと……」

そんなこと、あるわけないのに。

先輩はそっと伸ばした手で、私の指先に触れる。

昨日より赤みの引いた指。

今度は逃げずにそのままでいてみた。

けど、緊張で先輩の顔をまともに見れない。

「触られるのも、嫌になったかと思った」

そんなこと、あるわけない。

「けど、健が怒るんだよ。もういいんだって俺が言うと、“お前は里花の何を見てんだよ?”って」

「健さんが?」

「勝手に答え出す前に、たまにはぶつかってみろってさ。だから昨日諦めたつもりだったんだけど、健に言われてから実は今日ずっと1人で葛藤してた」

「葛藤?」

「うん。もう少し頑張るか、諦めるか。

さっきは焦って考える前に走り出しちゃったけど。でも奪ってここに連れてくる間も、内心めちゃくちゃビビってて」

少しだけ微笑んだ先輩は、「あ、ナナのこと!」って思い出したようにハッとしてまた話を戻した。

「ナナも傷つけたことに変わりはないから、やっぱりちゃんと返事して謝らないとって思ったんだ。

だから電話したんだけど、でも電話じゃうまく伝わらなかったみたいで。

それで、健に俺のバイト先聞いたとかで、そこで待ってたナナと1度だけ会って話したんだ。

あ、でも、俺のスーパーのバイトが終わってから、家に帰るまでの間だけで。

別にデートしたとかそんなんじゃないよ?」