Bloom ─ブルーム─

「あの日、まだ自分の気持ちもハッキリしてなくて、整理つかないままどうすることもできなくて。

“ごめん”しか言えなかったけど」

そして、私を見て恥ずかしそうに顔を背ける先輩。

なくなった揉み上げを撫でて、そのまま髪をかきあげてる。

気づくと、私はそんな先輩をジーっと見つめていた。

そしたら、「ダメだ。やっぱこっち向いてて」って私の顔は彼の両手によって、そっと横に向けさせられてしまった。

すごく不自然な体勢なんですけど?

これじゃ、体は向かい合ってるのに、先輩が見えない。

表情がわかんない。

「夏休み中さ、里花のことが気になって仕方なくて。まいってたんだ、俺。マジで。

バンドの練習と、掛け持ちのバイトでほぼ毎日忙しくしてたんだけど、それでも、里花の涙が目に焼きついて離れないんだ」

まるでそれは、夢みたいな言葉で。

これは夢なのかもしれないって、こっそり手の甲をつねってみた。

痛っ。

「けど、俺の中途半端な態度で傷つけたし、家のこともあったから、どうせいつか行くなら、今すぐ安田先輩と東京に消えるのもありなのかなって考えたのも事実で。

そしたら里花はいつかまた別の人を好きになって幸せになるだろうし、家も家族3人うまくやってけるんだろうなって。

それがさ、会ったら逆に里花に避けられるじゃん、俺。それはかなりダメージでかくて。

何だかんだ言って、引きずってんのは俺の方だったよ」