Bloom ─ブルーム─

土足のまま校舎に入ると迷わず階段を上り、たどり着いたのは屋上の扉の前だった。

ポケットから鍵を取り出すと、慣れた手つきでそれを鍵穴に差し込む彼。

そして、一緒に秘密の場所へ足を踏み入れる。

ここに来るのは久々だ。

もう2度と来ることはないと思っていたのに。

下よりもちょっと強い風が気持ちいい。

一瞬吹いた強風に目を閉じると、大樹先輩がやっと口を開いた。

「初めて、欲しいもの奪っちゃった」

欲しいもの?

私は先輩が何を言いたいのかわからず、ただ見つめ返すしかできなかった。

「あんな風に他の男に連れて行かれるの見たら、止められなかった。ごめん」

どういうこと?

「あの、よく、わからない……」

まだ握られてるこの手の意味も、ここに来た意味も、先輩の言葉の意味も。

わかんない。

「いつか遠くに行くかもしれない奴のことは、もう、どうでもよくなっちゃった?」

どういうこと?

繋がる手に落とした私の視線に気づいた先輩は、そっと私の手を離した。

それは、やっぱり、中途半端な優しさでしかないということ……なんだよね。

「もう、遅いのかな……」

でも、そう言う先輩は、繋いでいた自分の手のひらを寂しそうに見つめてる。

なんで?