「そうだ!じゃあ、山本先輩今フリーでしょ?そしたらさ、今この傷心な時に優しくしたらコロッと落ちるかもしれなくない?」

「今度は山本先輩にするとでも言うの?」

「私、諦めるとなったら切り替え早いんだよ。やっぱ山本先輩の番号教えてよ」

「知らないよ」

「は?知らないの?使えないなぁ」

使える使えないって、人を物扱いして。

「じゃあ、放課後ラーメン屋でも行ってみれば?」

それで、杏奈の気が晴れるならいいか。

もしかしたら、この空元気に触れて、山本先輩も元気になれるかもしれないし。

「ラーメン屋?」

「学校出て真っ直ぐ下りて行ったら古びたラーメン屋があるでしょ?あそこ、ギターの健さんのラーメン屋で、帰りみんなでよく溜まってるから」

「マジで?じゃあ、今日の帰りラーメン食べに行こう!」

「あれ、そう言えばラーメン嫌いじゃなかったっけ?」

「めっちゃ好きだし!」

昨日と言ってることが全然違うんですけど。

でも、頑張って笑う杏奈を咎める気にはなれない。

「じゃ、頑張ってね」

杏奈の肩をポンと叩く。

「うん。じゃ、帰り教室迎えに行くね」

嬉しそうに私の肩を叩き返す杏奈。

は?

他人事と軽く考えていた私は、突然の出来事に目を丸くする。

「も、もしかして私も行くの?」

「当然。私1人で行けるわけないし」

「えぇぇぇぇ……」

私こそ行けるわけないんだけど。