Bloom ─ブルーム─

やっぱり。

直人が友里亜に気づかないはず、ないんだ。

『無理矢理引っ張って私を送らせたけど、いつもなら「うるさいな」とか「しつこいな」とか冗談ぽく言う直人がさ、今日に限って、真顔で謝るんだよ?

『ごめんな』って。『ごめん』って。

そしたら、これ以上押せないじゃん。どんなに頑張っても勝てないよぉ』

誰かに私の携帯番号聞いたんだろうか?

泣きながら、怒りながら、それでも私にかけてきてくれたことに、ちょっとだけ胸が熱くなった。

『里花?聞いてるの?』

「うん。聞いてるよ。ちゃんと聞いてる」

『私、今日一緒に帰れてすごく嬉しかったんだよ?嬉しくて嬉しくて、もしかしたらって少しは気持ち動いたんじゃないかって、期待してたのに』

「うん」

『何さ、直人なんてね、こっちから願い下げだっつーの!

こんないい女ふったら後で絶対後悔するんだから。絶対友里亜なんかよりいい女になるんだから!』

「うん」

『見返してやるんだから』

涙混じりの杏奈の声が切なくて、私はただ返事だけを繰り返した。

やっぱり経験不足な私には、杏奈にも、山本先輩にも、慰める言葉なんて見つけられない。

でも、友里亜と直人を責めることだって誰にもできない。

みんな必死で誰かを想ってるだけで、誰も悪いわけじゃないんだ。

「杏奈」

私がその名前を口にすると、健さんが納得したようにため息をついた。

『何よ?慰めなんかいらないからね』

杏奈は泣きながらも、意地を張る。

そんな強がりな杏奈に、気のきいた言葉をかけるとしたら

「ラーメンでもご馳走しようか?」

これくらいかな?

少し離れた場所にあった顔が、クスッと笑った。