Bloom ─ブルーム─

柴犬に萌えないって、今言ったばかりじゃなかったっけ?

「そんなの、」

回答に一瞬迷う。

本気で返せばいいのか、笑いとばせばいいのか。

「よ、余計なお世話です!」

結局はべーっと舌を出すしか、交わす方法を見つけられなかったけど。

「言うと思った」

彼が大笑いするから、きっと正解だったんだと思う。

「送ってやんないけど、襲われるなよ。今度は絶妙なタイミングの登場なんてしないからな」

「大丈夫です。私を襲うような物好き見つける方が難しいですから」

「そうだな」

「納得しないでくたさい」

口を尖らせた時



プルルル、プルルルルルッ、プルルル



私の鞄の中から携帯の音が響き始めた。

取り出してみると、画面には登録してない番号が表示されている。

首を傾げながら通話ボタンを押す。

『里花?なんなのよぉっ!』

そしたら、いきなりの罵声。

私、なんかしたっけ?

でも、その涙声が杏奈のものだったから、私は言い返さずにただ携帯を耳に当てていた。

健さんが心配そうにこっちを見てる。

『私がどれだけ頑張ってやっと直人とここまで来れたかわかる?

私だってね、私だって、強がってるけど本当は毎日泣きたくて仕方なくて、それでも好きだから頑張ってきたのに。ヒックヒック。

直人が無理してるのも、必死で気持ち隠してるのもまるわかりだけど、でもいつかきっとって思ってたの。

でも友里亜のことになったら、簡単に目の色変えて焦り出すんだ。

さっきだって、泣いてる友里亜見つけた途端、私が隣にいるのも忘れてるみたいだったし』