Bloom ─ブルーム─

「俺には、友里亜ちゃん、勇に対して恋に恋してるだけ、みたいに見えてたからさ」

「……」

「本当は最初から、違うとこ見てたんじゃない?その事に自分も気づいてなかったんじゃない?」

思い当たる節は確かにたくさんあった。

何も言えずにいる私に、健さんは

「まぁ、お前が申し訳なく思うことじゃないけどね?」

と、笑って言った。

「あ、ウワサをすれば」

健さんの視線を辿ると、その先に1人で自転車を走らせてくる山本先輩の姿があった。

そして、俯いたまま私達の目の前を走り去ろうとする。

「勇!」

こっちに気づいたはずなのに、チラッと見た後また目を伏せて行ってしまう山本先輩。

でも、少し離れた場所で自転車を止めて振り向くと

「男は、潮時が肝心だからな」

なんて決め台詞っぽいことを、カッコつけて言う。

「それ言うなら、『引き際』だろ」

敢えて健さんの突っ込みは、山本先輩に届かない程度のトーンで呟かれた。

「友里亜ちゃんは?」

健さんが大声で尋ねた時、私達の横を走って行くタクシーの中に、友里亜に似た姿を見つけた。

俯いてるし、逆行ではっきりとは確認出来なかったけど。

多分、そう。

山本先輩はタクシーが走り去ると、「俺は、泣いてなんかいないからなっ」って、私達に背中を向け、そのまま自転車をこいで行ってしまった。