Bloom ─ブルーム─

「どうしたんだろうね?」

ナナさんの存在にひとり気づかない友里亜は、不思議そうにその様子を眺めていた。

「健、いい加減にしろよ」

ナナさんに向かって真っ直ぐに弾き続ける健さんの肩を、山本先輩がグイッと引っ張った。

その弾みで、体勢を崩した健さんがガタッとその場に倒れる。

「ってぇな。何すんだよ」

「それはこっちのセリフだよ」

2人が互いの胸ぐらを掴み合うと、会場全体がザワザワし始めた。

せっかく魅力に惹き付けられたはずの人達は「なんなんだよ」って、また帰る準備を始める。

その様子に気づいた大樹先輩は

「なーんつってー。演出だったりする。びっくりした?」

ニコッと笑って観客を安心させようとした。

ハッとした山本先輩も健さんから手を放すと、ひとつ深呼吸して

「ごめんねー。リアルだったっしょ?ウケた?」

笑顔を取り繕ってその場をやり過ごそうとした。

「は?演出でもなんでもねぇし」

なのに、健さんはその2人の努力を簡単に踏みにじる。

そして今度は大樹先輩の胸ぐらを掴むと

「なんでいつもそんなヘラヘラしてんだよ?ムカつくんだよ」

そう言って、その頬を思いっきり殴り飛ばした。

ズザザザーッと大樹先輩が後ろにあるドラムの方へ飛ばされる。

さっきとは違うキャァーッという声が女の子達の間から溢れた。