Bloom ─ブルーム─

こんなことされて、平気でいろなんて、無理に決まってる。

前列の女の子はさっきまでブーイングだったはずなのに、歌声を聴いた途端瞳を潤ませていた。

少しも外さない音感。

高音で伸びるキレイな裏声。

そして、少しも落とさない声量。

その瞬間のその1音に全力なんだ。

どこかで手抜きする要領の良さなんか持ち合わせてなくて。

だから私達は、彼が歌う全ての瞬間から目を離せなくなる。

歌いながら私と目が合った彼は、ふっと笑みをこぼした。

そして、誰にも気づかれないように、汗をふくふりをしてミサンガを揺らす。

そんな些細な仕種に、私の胸はドキドキの限界を超えて。

呼吸をするのさえ、忘れてしまっていた。