Bloom ─ブルーム─

ハッピー……バースデー?

私の誕生日、知ってる?

『ある情報を勇から仕入れて』

友里亜が話した誕生日を、山本先輩が大樹先輩に伝えたんだろうか?

ううん。そんなはずない。

私なんかのために、こんなことしてくれるはずない。

きっと、この会場にいる、他の誰かの……




そう考えていると、

──ポロン……

大樹先輩が奏でるぎこちないギターの音が繋がりあって、メロディーに変わっていく。

でも、最初の1音で、すぐにわかった。

大樹先輩が演奏しようとしてるのは、FMラジオから流れていたあの曲。


私の好きな歌。

そして、お母さんが好きな歌。


他の3人は手を止めて、山本先輩と健さんはドラム横の台に腰を下ろした。

演奏する気はないらしい。

大樹先輩だけが作り出すこのメロディーが、私の期待を加速させる。

自惚れてもいいのかな?

私のために歌ってくれるって、思っていいのかな?

誕生日プレゼントとして、受け取っていいのかな?

滑らかではないけど、柔らかなギターの伴奏に、大樹先輩の声が重なった。

切なくて優しくて、泣いてるみたいに。

先輩の声が、やっぱりこの曲にすごく似合う。

それは、私を通り越してお母さんにまで届いているような、そんな歌声だった。



マイクに向かって必死で振り絞るその声に、心の震えが止まらない。

完全にノックアウトだ。