Bloom ─ブルーム─

他にも理由は言ってたけど、でも大樹先輩にとって、健さんを傷つけたくないっていうのは大きな理由のひとつだったはず。

もし健さんが、自分のせいで2人がうまくいかなかったって知ったとしたら……。

それを今まで隠されてたと知ったら……。

「ね?だから、里花、頑張ってね。てかもう彼女みたいなものだよね?今日も一緒に来てたし」

事情を知らない友里亜は、嬉しそうに盛り上がっていた。

「友里亜、違うんだ」

「え?」

妄想がこれ以上突っ走らないように、友里亜の口にポテトをパクッとくわえさせると一気に話した。

「元カノのこと、私知ってたんだ。

それで、大樹先輩の気持ちはきっとまだナナさんに残ってると思う。でも、健さんのことも大切な友達だから振ったの。

山本先輩がそう言ったのは、きっと大樹先輩が遠慮したことを健さんに隠す為じゃないかな。

健さんと大樹先輩の仲がこじれないように」

テキトーな位置に、たまたま私がいたから、名前を借りただけの話。

でも、きっと健さんには通じなかったんだ。

だって、私の単なる片想いって、健さんはとっくにわかってると思うもん。

だから健さん、苛立ってる風だったんだ。

大樹先輩に怒ってるんだ。

喧嘩になってなきゃいいけど。

無事にライブ終えられるかな。


「里花……ごめん。私、この話したら里花喜ぶとばかり思って。もしかして逆に傷つけちゃった?」

深刻な表情で2人のその後を気にしていると、友里亜が申し訳なさそうに聞いてきた。

「ううん、全然。わかってたことだし、でも聞けて良かったよ。ありがとう」