DVDって……。

でも、友里亜は何のことかさっぱりっていう雰囲気。

それよりも、みんなにキスしたことばれちゃったって動揺してる。

けど、山本先輩の隠し持つDVDの中身より気になったのは、そんな話をしたら一番に食いついてきそうな健さんがずっと黙ったままなことだった。

どうしたんだろう?

この人でも、ライブ前には喋れなくなるほど緊張するんだろうか。

いつもなら気にならない、ちょっとだけキツい目元が、無口なだけで妙に強調されて、今日はドラムより威圧感がある。

変なの。



駅を出ると、小雨程度だったものがひどいどしゃ降りに変わっていた。

ライブハウスまではここから10分くらい歩かないとならない。

友里亜と山本先輩は傘を持ってたけど、これじゃあ傘があってもびしょ濡れになりそうだ。

「俺ら会場準備とかあるし、1番手じゃないから、少し雨が落ち着いてからゆっくり来てもいいよ?」

山本先輩が友里亜を気づかって言ってきた。

「うん。じゃあそうするね」

大樹先輩は「遅刻するなよ」なんて私に忠告する。

どの口が言うんだ?

私が目を細めると、ぶぶっと吹き出してた。

私達は駅前に残り、駆け出す4人に手を振る。

「1時間くらい余裕あるよね。ポテトでも食べる?」

私は目の前にあるマックを指差した。

「うん」