確かに、せめて髪だけは、と、ちょっと気合い入れて巻きすぎてしまった。

ずっと友里亜から借りっぱなしだったヘアアイロンも、先週自分専用のを買ったし。

これも背伸び……だったかな。

「可愛いね。似合うじゃん」

「べ、ベベ別に先輩の為とかそんなんじゃないですよ?ただちょっと、初ライブだし、それなりにちゃんとしてかなきゃとか思っただけで」

「パーマ?」

「いえ、アイロンで」

「ふーん。俺の為とか言われたらめっちゃテンション上がったのに」

「……」

「なんつって。あ、次だ」

なにそれ。

なんでそんないとも簡単にそんな事言えちゃうの?

私の気持ちを知ってか知らずか。

そして、またあっさり立ち上がって「到着~」なんて笑ってる。

「あいつら怒ってるかも」なんて、さっきの言葉に全然深い意味はありません、みたいな素振り。

なにそれ。

地下鉄を降りると、改札口の向こうでバンドのメンバーと友里亜が待っていた。

「遅いよ」

「わりい。衣装と携帯忘れて」

「は?衣装忘れたのかよ?」

「それは取りに戻ったんだけど……」