いまきみが笑ってくれるなら



こんばんは。


きみからのチャット。



こんばんは。と返す。



そこから二人ははじまった。



そのアプリは本人が登録していれば
顔写真や年齢や住まいなどの
簡単なプロフィールを見れる。



わたしはチャットを続けながら
いつも通りの流れで
彼のプロフィールをチェックした。



22歳、東京都在住
趣味は音楽、ファッション



東京か。ちょっと遠いな。
と思いながら顔写真を見る。



そこに彼はいた。
どこを見つめているか
よくわからない遠い目をして
右手には吸いかけの煙草。
両腕は自然に垂らされ
ちょっと猫背気味で立っている。



誰かが斜めから写した写真だった。



黒いくるぶし丈のパンツに
黒いローファー。
右足の赤いバングルが鮮やかだった。
小さめの水色のTシャツ。
鼻は高めで短髪だった。



なんでかわからないけど
それだけで
すごく魅力的だった。



そこには写真の中の
消えてしまいそうな
壊れてしまいそうな
繊細で悲しそうな
彼がいた。