まったく、酷い目にあったもんだ。

微かに赤く腫れあがる左の頬を押さえて、

『占いの館』と看板がかけられたドアを開け中に入る。

「おや、どーしたんだい?」

幾重(いくえ)にも重ねられた色とりどりの天幕の中で、

水晶球を覗き込んでいた人物が顔を上げて楽しそうに声をかけてくる。

「どーしたもこーしたもあるか! どうせもう知っているんだろ?」

水晶球の置かれた台座の前の椅子に、どっかりと腰を下ろして男が言った。