武は鈴の音が聴こえないかどうか、耳を澄ませて意識を集中させた。

「触らないでくれ」

ほっとため息をついてから小さく呟き蓋を閉めた。

天井の照明を受けて輝いていた光が、桐の箱によって閉じ込められる。

「そんなに怒らなくてもいーじゃん」

すねたように、千華が唇を尖らせた。

「悪い。これは大事なものだから」

自分に言い聞かせるように口にして、引き出しの中にしまった。

「ふーん、そんなに大事なものなんだ」

「ああ、これがないと大変なことになるんだ」

「なんか大袈裟(おおげさ)だね。まぁ、いーけど。あそぼーよ?」

「悪いけど今はそんな気分じゃないんだ。ジンにでも遊んでもらえよ」

ぎこちなく微笑んでそう言うと、ベッドに転がり頭から布団をかぶった。