「なーに、それ?」

捧(ささ)げ物をするかのように抱えあげられているモノに気づき、

千華が興味深そうに首をかしげて覗き込んだ。

細い肩の上にのっていた黒髪が、さらさらと音をたてて零れ落ちる。

そんな音が聞こえるほどに、部屋の中は沈黙と緊張感で満ち溢れていた。

「かわいー鈴だね。あたしにちょーだい」

蚕(かいこ)の繭のような白い綿に包まれた銀色の鈴から伸びる赤い紐を、

指先でつまみ持ち上げようとする。

「触るな!」

「えっ」

武の言葉にびくっとして、千華が手を引っ込める。