どんな? というような顔をして、男が目で問いかける。

「駅前で痴漢行為をした男の子なんだけど」

そう言ってから、

「いくつぐらい?」

と千珠に訊ねた。

「たぶん二十歳ぐらいだと思うけど」

千珠が口にした瞬間、男の顔が一瞬だけ動いた。

そして千珠も由加里も、それを見逃さなかった。

「なんで探してるの?」

平然を装って、男がグラスを拭きながら笑みを浮かべる。

「知ってるんですか?

もう一度会いたいんです。

別に警察に突き出そうとかそういうことじゃなくて。

ただ、もう一度会いたくて……」

どう切り出そうか思案している由加里より先に、千珠が言った。

こういうことなんだけど、そう表す様に、由加里が唇を歪めてみせる。