「ただ、これだけ探しても見つからないってことは、

どこか別の場所に行っちゃったか、留置所にでも入ってるんじゃないの?」

冗談っぽく由加里が口にした。

「かもね」

小さく千珠が呟いて返すと、

「もー、しかたないわね」

由加里がカウンターのスツールを叩き、

「マスター、マスター」

と叫んだ。

「はい、なんでしょう?

お代わりですか?」

口元に髭を生やした四十代前半ぐらいの男が、笑顔でやってきた。

「人を探してるんだけど?」

同じように、由加里も営業スマイルを浮かべる。