「千珠、今夜予定ある?

なかったら飲みに行こうよ」

店のシャッターを下ろし、

キーケースの中から一番細長い鍵を鍵穴に差し込んで由加里が言った。

「うん、そうだね。じゃあ駅前のショットバーにしない?」

たくさんのビルのネオンによって星が隠された夜空を見上げ、少し考えてから千珠が答える。

「また駅前なの? あんた最近ちょっと変だよ」

「そんなことないけど……」

「店に着いたら、ちゃんと話してもらうからね」

年の離れた姉のように、由加里は微笑んだ。