「知りたいか?」

きれいに片付いたお皿の上にスプーンを置いて、武が言った。

「うん、知りたい」

待ってましたと言わんばかりに、千華がテーブルの上に身を乗り出す。

「昔、侍だったんだよ」

小さく呟いて武は席を立ち、自分の部屋に歩いていった。

あとに残されたこの部屋には、

「えっ、どういうこと?」

という千華の声だけが、木魂(こだま)の様に鳴り響いていた。