『ほぉ、自ら望んで命を捨てるというのか?

外には、死にたくなくて逃げ惑うものばかりだというのに?』

心底おかしそうに微笑む女が、炎に焼かれることなく問いかける。

「そうだ! この女のいない世になど、もはや未練(みれん)はない。

早く俺達を連れて行ってくれ」

早く楽にしてくれ……。

男の唇から声にならない言葉が漏れ出した。

『おもしろい。ではその女がいる世になら未練はあると申すのか?

ならば待つがいい。

再びその女が、おまえの前に現れるときまで……』