「あっ、武」

いち早く武の存在に気づいた千華が、

趣味の悪いアロハシャツに身を包んだ男につかまれた手を振りほどこうと、必死に腕を振り回す。

「なんだよ、おまえ。こいつの連れか?」

よくある光景のように、他の二人が武の前に立ちふさがった。

武は壊れて開ききったビニール傘の羽をまとめて右手で持ち、

片方の男の鼻をめがけてすばやく下から振り上げた。

ヒュン、とするどく風を切る音がする。