武はしばらく、レイラと千華が立っていたはずの場所を見つめていた。

部屋の中には二人がいた気配すら残っていない。

微かに感じられるものは、千珠の小さな寝息と肺に残るビャクダンの香り。

そして胸に残る温かな痛みだけだった。

武は瞳を閉じて、その痛みをそっと胸の奥にしまった。