家の中は暗かった。

それもそのはず、店を出たのが三時過ぎだったので、

由加里と千珠を送って帰ってきたからには、もうすでに四時を回っているはずだ。

そんな時間まで飲んでいたかったわけではなく、

由加里が、「答えるまで返さない!」と言い張った為だった。

結局、武は、「少し、考えさせてくれ」と言って、やっと開放されたのだった。

武は電気をつけることなく、暗闇の中、階段を上り自分の部屋に向かった。

千華の部屋のドアの隙間から、うっすらと灯りが漏れているのに気がつきはしたが、疲れすぎて頭がまるで回らなかった。

「明日、遊んでやればいいよな」

言い訳するように心の中で呟きながらドアを開けて、そのままベッドに倒れこんだ。

けれど武は知らない。

こんなにも近くで自分の名が呼ばれていることを。

そして、その声が水の気配をまとっていることに……。