武が何一つ言葉を返せないでいると、戻ってきた千珠が、

「なんの話?」

と微笑みかけてくる。

「いや、べつに」

そう言おうとした武より早く、由加里が言った。

「ねぇ、千珠。あんた武の子供、産みたいんでしょ?」

「えっ、やだ急に。なに言ってんのよ。もう酔ったの?」

動揺した千珠が早口に問いかけた。

「どうなの? いやなの? それとも産みたいの? ハッキリ言いなさい!」

由加里が答えを求めるように詰め寄る。

千珠に戸惑いを含む目で見つめられたが、武は口を挟むことができなかった。

「トロトロしてると、取られるわよ! 誰にとは言わないけどね」

由加里の言葉に反応した千珠が、テーブルを見つめながら消え入りそうな声で呟いた。

「産みたいです……」