「おまえさぁ、どうでもいいけど、ほんと千珠にはそんな顔見せるんだよな」

呆れたように武が言った。

「あら、当たり前じゃないの。この子はわたしの大切な可愛い子なんだから」

武に微笑んでそう言うと、千珠のほうを向いてその何十倍かの笑顔で頭をぐりぐりと撫でまわす。

「もう、やめてよ」

恥ずかしそうに、千珠が由加里の手を取ってたしなめた。

武はそんな二人を眺めながら、タバコに火をつけて煙を吐き出した。

白い煙は、どこからか流れてきている空調の風によって流されて見えなくなった。

「それ、一本ちょうだい」

由加里は返事が返ってくる前に、武のタバコを一本抜いて口にくわえる。

そして武のライターを手にとって火をつけると、おいしそうに一口吸ってため息と一緒に吐き出した。